帰化手続においては、申請される方が日本で生まれている場合、「出生届記載事項証明書」を日本の役所で取得する必要があります。
出生証明書は医師や助産婦が記載する証明書で、母親の氏名が本名や通称名で記載されています。この証明書は公的な証明になりますので、この書類から申請者の方の母親が誰であるかが特定されます。
そのため、帰化申請の際に、よく問題になるのは、「父親」に関することです。具体的には、父親の名前や生年月日について、出生届記載事項証明書に記載されているものと、韓国の戸籍に記載されているものが違うというケースが時々見られます。
父親の名前が違っても生年月日などで同一人物と推定される場合は裁判をしなくてもよいのですが、名前、生年月日、本籍が違う場合は別人として扱われるので、法務局からは、裁判で父親を特定するか、どちらかを切ってくれと言います。(前夫と離婚が成立する前に生まれた子(つまり婚姻中に生まれた子)は、前夫の子と推定されますので、もし前夫の子でないという場合は、親子関係不存在の訴えが必要になります。)
このような場合、父親が誰かを特定する裁判の判決書(確定証明書付)を法務局に提出しなければなりません。
具体的にどういう方法で裁判をするかは弁護士が判断しますが、裁判に必要な書類の原本を裁判所に提示する必要がありますので帰化申請に必要な書類一式を揃えているところで、まだ法務局に原本を提出してない段階で裁判をするのが合理的かと考えます。
当事務所に依頼された方で申請の際に法務局から裁判が必要と言われた場合は、弁護士を紹介させていただき、弁護士に一緒に法務局へ事前相談に行ってもらうなどの体制を取っています。
弁護士費用は、依頼する弁護士との話し合いになります。DNA鑑定費用などの実費もどういう裁判をするかで変わってくるようです。
そして、帰化申請の際に、上述した判決書を法務局に提出すると、「帰化許可後の身分証明書において父親欄が空欄になる場合があります」というリスクの説明を受けることがあります。
実際にあった話で、訴訟自体が時効により請求棄却となった案件ですが、帰化許可が出た後の身分証明書の父親欄を見ますと、本来この人が父親だろうという方の名前が入っていました。法務大臣の裁量ということでしょうか・・・。