帰化許可申請に必要な書類のなかのひとつ、婚姻記載事項証明書は本人だけではなく両親の分も必要です。

特別永住者の場合、日本での書類は比較的集めやすいと思われがちですが、一番集めやすいはずの住民票でも、ご自身でとっていただいたものをお預かりすると、本籍(謄写省略)、法第30条の45に規定する区分(謄写省略)、在留カード等の番号(謄写省略)となっていることが・・・。このように一部の記載が省略された住民票は、帰化申請書の添付書類としては不十分です。

帰化申請で使用するからと法務局からもらった「必要書類一覧表」をお渡しして、市役所で「帰化するのに必要」と言ってもらい書類を取得してもらっても、行政がよくわかっていないことが多いですね。このように、せっかくとっていただいた書類でも記載が省略されていると、結局取り直しになりますから時間も料金も2度手間、無駄になってしまいます。

今回のコラムでは、役所で取得する証明書に関するエピソードをいくつかご紹介。

 

まずは、出生記録事項証明書です。

出生記載事項証明書は生まれた日を知らないと言うことはありませんから、どこの役所に提出したかわかれば請求しやすいですね。たまに里帰り出産、生んだ病院の住所地に届けられた場合もありますが、3通り(生まれたときの住所地、里帰り出産をした場合実家の住所地、生んだ病院のある住所地のいずれか)探せばいいので、比較的楽です。

 

次は、婚姻記載事項証明書。

本人の婚姻記載事項証明書もそんなに古いことでもないので、日にち、提出した役所もわかりやすいですが、両親の記載事項証明書となると、なかなかすっといきません。

ちなみに婚姻記載事項証明書が要求されるのは双方が外国人の場合です。どちらかが日本人であれば日本の戸籍が婚姻の証明になりますから、窓口で婚姻記載事項証明書を請求してもないと言われます。

両親が婚姻届を出した日を覚えていない場合、もしくは出していないな場合、かなり以前で役所が保管していない場合など書類が揃わない場合もあります。

第1子出産から推測して当時住んでいた住所地の役所に請求してみたりしますが無い場合、出しているはずなのに保管が無い場合、古くなりすぎて役所が破棄した場合は「ないという証明書」を出してもらいます。行政印が無い場合は無料ですが、印があると少し高くなります。

ないという証明書の場合「○○年より○○年探したけどありませんでした」と言う形式が多いのですが、親切な役所は5年とか(手作業なので大変らしいです)探してくれますが、うちは1年しか探さないとはっきり言われるところもあります。

先日も、○○市に出したということで請求しましたが「記録がない」と言われました。昭和30年代でしたから、法務局からも「新しいからないはずはない」と言われ、今度はご本人様(母親)に役所に行ってもらいましたがありませんでした。その地にはずっと住んでいるはずなのに・・・。

ところが離婚届記載事項証明書はそこの役所にあったのです。離婚するということは結婚してないと出来ないだろうから、ある意味婚姻の証明も兼ねる?ような気がしますが、無いものは無いので、ないと言う証明を出してもらう形で対応しました。

 

またこのような事例もありました。

母親が日本籍、父親が韓国籍で、夫婦の間に生まれた兄は日本籍、弟は韓国籍という事例です。どうして兄弟でこのように国籍が違ってしまったのでしょうか?

このケースでは、夫婦が婚姻届を提出する前に、兄が生まれ婚姻前の子供として母の戸籍に入りました。(つまり、日本国籍になりました。)

その後、夫婦は婚姻届を提出し、その後生まれた弟は、父の戸籍に入ることになりました。(つまり、韓国籍になりました。)

母親が日本籍で父が韓国籍の場合、今は母の日本の戸籍に入れられますが、以前は父の戸籍にしか入れなかったため、兄弟間で国籍が違うという状況が発生したわけです。

その後、ご両親である夫婦はすでに離婚されており、母親は日本人と再婚をしたそうです。

上記の弟さん(夫婦が婚姻届を提出した後に生まれ、父の戸籍に入ったため韓国籍である方)が帰化申請を行うこととなりました。

法務局より、現在の日本人である兄の戸籍(現戸籍)、母親の現戸籍が必要と言われ、再婚した母親の現戸籍まで請求しました。

弟さんは母親とまったくの音信不通でしたので、再婚した母親の現戸籍をご覧になって、子どもを3人出産されていることを知り、複雑なご心情のようでした。

 

他にも日本の戸籍が請求される場合として、帰化をしている兄弟などの帰化が記載された戸籍が必要と言われることがあります。

ところがご兄弟の方から、自分の帰化申請のときはそんなもの必要なかった、個人情報だ、といって拒否されるケースや、ご用意いただいたとしても戸籍抄本だけでいいだろうとか、帰化と言う記載がない戸籍謄本しかもらえなかったり・・・ということもあります。なお、帰化の記載を消すために何度か転籍されているような場合もあります。

法務局が必要とするのは帰化の記載のある戸籍ですので、記載がある戸籍というのは除籍謄本になり、本籍が変わった戸籍を追いかけるのはかなり大変です。

ここまで出来るのは行政書士などの専門職でなければ難しいと思います。日本での書類収集は簡単ではありません。

 

いずれにせよ、親族を巻き込んでしまう帰化申請は、ご自身ででやろうとして親族間が気まずくなったり、途中で挫折してしまうこともあるようです。できるだけスムーズに帰化申請を進められるよう、ぜひ経験豊富な専門家に相談していただきたいと思います。