帰化の生計条件、国籍法第5条第1項4号では 「自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること。」とあります。

これは申請者に収入がなくても同一生計の他の親族の収入によって生計を営むことができればよいので、専業主婦や学生などが該当します。また、親の仕送りを受けている学生などでも条件を満たすことになります。

 

反対に親が帰化申請をする場合、年金生活で収入が少ないときに、収入が多い子供が仕送りをする場合も仕送りの事実を証明できるものや、たとえば銀行の通帳などに仕送りが記載されているとか、子供が仕送りができるほど裕福であることなどを証明できる資料があれば認めてもらえます。

 

この場合は、子供の確定申告書などの収入を証明するものや納税証明書などの義務をはたしているかなどの証明資料が状況や金額に応じて必要になります。

 

以前ですが、帰化申請をしたいという年配の女性の相談を受けました。特別永住者で、賃貸マンションの一人暮らしです。年金をもらえる年齢ではありませんし、実際に年金ももらっていません。

 

ひととおり帰化についての説明や必要書類をお話した後で、何だかいいにくそうに、「実は(ある会社の会長の)愛人なんですが、収入の証明は払っている会社にだしてもらったらいいのですか?」

 

「・・・えーー!」ですよね。

 

会社の人たちもそのことを知っている、奥さんも公認だというのです。だから、会社いったらお金を渡される、なので証明も出してもらえる。とおしゃるのです。「・・・・」

 

民法第90条には、 「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」とあります。

この「公序良俗」とは、「公の秩序又は善良の風俗」という意味です。よく例に出されるのは、妾(愛人)契約、人身売買や殺人を依頼する契約等の社会的妥当性を欠く契約のことです。

このような契約は社会の秩序に反する契約ですから、いくら当事者が合意したからといっても無効です。

 

「あのー、普通にどこかでパートをするとか働いてもらえませんか。いくら大きな会社の会長の愛人でも、愛人の所得証明があっても帰化申請は無理です!」

 

私たち行政書士はコンプライアンス(法令遵守)義務がありますので、こういう話を耳にした以上、仮に愛人の所得証明ではなく、会社で雇っている従業員として所得の証明を出してくるかもしれませんが、真実を知ってしまった以上

お受けするわけにはいきません。

 

もちろん理由をお話してお断りをしました。