「年金を払っていないと帰化ができないのでしょ」・・・と、国民年金未納についてのお問い合わせをよく受けます。

外国人はもともと国民年金には加入できず、昭和57年に法改正があって加入できるようになったのですが、法改正後も未加入のままの状態が続いているという方も多いようですね。

今回のコラムでは、国民年金と帰化申請の関係についてお話しします。

 

帰化申請の際には、国民年金の第1号被保険者(※)については、年金定期便や年金保険料の領収書などの写し直近1年分を提出する必要があります。

※第1号被保険者とは、20歳以上60歳未満の自営業者・農業者とその家族、学生、無職の人等、第2号被保険者、第3号被保険者でない者です。ちなみに、第2号被保険者は会社員の方、第3号被保険者は会社員の配偶者の方(専業主婦・主夫)をいいます。

 

国民年金法は1959年(昭和34年)に制定され、保険料徴収は1961年(昭和36年)4月から開始されました。これによって、日本は国民皆年金制度へ移行しました。つまり、国民すべてが年金に加入するということです。

しかし、当初は、外国人の方は国民年金に加入することができず1982年(昭和57年)に、被保険者の資格要件の一つであった、国籍制限を撤廃し、外国の方も加入できるようになりました。

しかし、日本の年金を受給するには,最低25年間の加入期間が必要です。いくら加入ができても25年の加入期間を満たすことが難しい場合はそのまま、国民年金未加入となってしまった方もいます。

 

今までは国民年金未加入でも帰化の際には特に問題は無かったのですが、最近になって帰化申請の必要書類として年金定期便や年金保険料の1年分の領収書などが要求されるようになりました。

そこで、国民年金に加入してないと帰化できないのか?という問題が出てくるわけです。

実務上法務局からは、今から年金保険料を支払っても年金をもらえない(年金をもらうために必要な25年の期間を満たすことができない)年齢の方についても、一度年金事務所に行って相談するように、という指示を受けることが多いです。

年金事務所できちんと調査することで、わずかでも加入期間があり、いくつかの条件がそろえば、合算対象期間※2(通称「カラ期間」)も、加入期間として計算され(年金額には反映されません)年金をもらえることもあるようです。自分では国民年金未加入であると思っていても、知らずに年金に加入していた仕事をしていたことがあるからです。

※2 合算対象期間(通称「カラ期間」)について

https://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=3254

日本年金機構ホームページ

 

また、国民年金保険料の後納制度※3などを利用するなどして年金がもらえることもあります。

※3国民年金保険料の後納制度

https://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=6221

日本年金機構ホームページ

年金事務所によれば、国民年金保険料の後納制度は強制ではありませんが今のところ利用する人は少ないそうです。

 

それで、今から年金保険料を払っても年金がもらえないことがはっきりすれば、1年分の領収書は提出の必要はないということになります。

結論をいいますと、まだ年齢がお若い方で、これから年金保険料をきちんと支払えば将来年金を受給できるという方は、帰化申請にあたって国民年金保険料を納める必要があり、これから年金保険料を支払っても将来年金を受給できないご年齢の方については、国民年金を払っていなくても帰化が可能ということになります。

なお、会社代表者の方の場合は、会社が社会保険に加入しているかどうか、といった点も法務局によって確認されることがあります。

何事もコンプライアンスが大切ということですね。